■VAR導入よる「サッカー文化」への寄与と害悪

 2018年ワールドカップ終了後、FIFAは「キー・インシデント(試合の行方を左右するような重大な事象=得点、PK、退場など)の判定の精度が、「95.6%から99.35%に上がった」と胸を張った。その差は「3.75ポイント」である。言い換えれば、「キー・インシデント」100回の判定で、VARによって「間違い」が正されたのは、4回弱ということになる。

 そもそも、「レフェリー(主審)」とは、試合する両チームが判定をお願いしているものであり、その判定は「神聖」などという性質のものではないが、間違いなく「尊重」すべきものであるというのが、サッカーという競技の根本的な精神ではないか。そこに勝負だけでなく金銭がからみ、それが途方もない額になって恐れおののき、サッカーの根本精神を忘れて「正しさ」を求めた結果がVARの導入だった。VAR導入の思想が、サッカーという文化にどれだけ寄与しているか、むしろ大きな害悪になっているのではないかと思える面も少なくない。

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