■「後半がまったく違うサッカーになったのがすごく悔しい」
脇坂からボールを託されたMF遠野大弥も、完璧な連係だったと自画自賛する。
「バフェに当ててみんなが中へ入っていく形は日頃の練習から意識していたし、あのときはヤスくん(脇坂)とも目が合っていた。僕自身は後ろ向きの体勢だったので、ヤスくんがさらにボールを運べる場所へ、丁寧なパスを置こうと思った」
遠野が選択したのは右足のアウトサイドを軽く合わせたワンタッチのリターン。目の前を横切っていくボールに、遠野と脇坂を見ていたDF犬飼智也も反応できない。これを右足の付け根で収めた脇坂は、状況を冷静に見極める時間も有していた。
「その前の決定機で下を狙って防がれていたので、それもあって上を狙いました」
柏のフィールドプレイヤー4人に囲まれながらも、脇坂が間髪入れずにボールの落ち際に右足をヒットさせる。17分に迎えた1対1の場面で、足元を狙った一撃をセーブされたGK松本健太の左側を射抜いたシュートが均衡を破った。
「あれは川崎らしいゴールだったと思うし、川崎にしかできないようなサッカーでもあるし、ああいう形をどんどんピッチ上で表現して、もっともっとゴールに繋げていきたい、というのがいまの一番の本音なんですけど」
瀬川から家長、ゴミス、脇坂、自分自身が関わり、脇坂がゴールするまでに要した時間はわずか6秒。2つのワンタッチパスが散りばめられた以心伝心のコンビネーションに関わり、アシストがついた遠野は次の瞬間に真逆の言葉を紡いでいる。
「それを踏まえても、後半がまったく違うサッカーになったのがすごく悔しい」
遠野が振り返ったように、後半の川崎が見せたのは防戦一方になる姿だった。
(取材・文/藤江直人)
(後編へ続く)