■「強化試合で完敗」マリ代表と本大会で再戦
ただし、このような戦い方が通用するのはアジア予選までである。
アジアのチーム相手には、選手のテクニックや戦術能力、選手層の厚さ、監督以下スタッフの準備などを含めたチームの総合力で、明らかに日本が優位な立場にある。
もちろん、アジア諸国にもそれぞれのストロングポイントがあり、日本が90分間にわたって圧倒して勝てるような大きな差はないのだが、それでも日本が優位にあることは間違いなく、今大会のようなプロフェッショナルな戦い方をすれば、かなり高い確率で勝利を手繰り寄せることができる。
だが、オリンピック本大会での戦いでは、それだけでは通用しない。「チームの総合力で日本が劣る」と決めつける必要はないが、必ずしも日本が優位にあるわけではない。
本大会で対戦することになったマリ代表とは、3月22日に強化試合ですでに対戦している。
そのマリ戦で、日本は開始早々に平河悠の得点で先制したのだが、その後はマリのスピードに圧倒されて3点を奪われて完敗を喫した。
その他、オリンピック本大会で対戦するのはパラグアイとイスラエルだが、南米の古豪パラグアイは粘り強さと堅固な守備を持っている。イスラエルの力は未知数だが、昨年のU-20ワールドカップで日本代表はグループリーグ最終戦でイスラエルと対戦して、相手に退場者が出たにも関わらず、まさかの逆転負けを喫してラウンド16進出を阻まれた。
こういう相手には、いくら沈着冷静に戦っても、計算通りの結果が出るとは思えない。冷静さと規律はもちろん必要なのだが、時にはリスクを負ってでも強気で勝ちに行く姿勢も求められる。90分を計算することもできはい。キックオフ直後から90分の笛までフルパワーで勝負するしかない。
U-23アジアカップの開催が本来の1月開催から4月開催にずれ込んだため、アジア予選突破決定から本大会まで、わずか2か月強しかない。だが、オリンピック本大会で上位進出を目指すのなら、「アジアモード」から「本大会モード」に切り替える作業も必要になる。
メンバー選考でも、海外組の選手をどれだけ招集できるかは未定だし、久保建英のようなA代表で中心となっている選手もオリンピックで起用すべきか……など、オリンピック本大会に向けた大岩剛監督の動きからも目が離せない。