「黒川は水戸の救世主になりますか」と聞かれたら
藤枝戦を振り返った黒川は「相手はサイドに人数をかけてきたので、そうした状況で高い位置を取るのは難しかった。でも攻撃と守備は表裏一体なので、そこは自分たちも思い切って優位性を持てれば、いい守備につながっていくし、逆にいい守備ができれば、攻撃にもつながっていく」と語った。
このシリーズの冒頭で述べたように、水戸は危機的な状況にある。水戸の危機を回避する救世主として、私は黒川淳史のプレーに託したい。「流浪のアタッカー」となった彼は「特に若い選手がこのチームには多いですし、経験が少ないと言ってしまえば、それまでなんですが、僕はけっこう経験してきているほうだと思うので、そうしたことをチームに活かしたい。チームに自分の経験を還元すること、そして結果を残したい」と一点を見つめて話す。
「具体的な数字はあるの?」と私が問うと「15ゴールを決めることです」とキッパリと言い切った。もしも15ゴールをあげたのなら得点王にもなれるし、昇格だって夢ではない。黒川の発言には、相当の覚悟がうかがえた。
かつ て「大宮ユースの最高傑作」と謳われた1人の選手が、幾度も煮え湯を飲まされて26歳になり、自分が飛躍したきっかけを作ってくれたクラブに帰ってきた。私は彼と話していて、「苦労したんだね」とは言いたくなかった。だから、言葉を代えて彼に伝えた。「ずいぶん俯瞰した視点を持てるようになったんだね」。もし、サポーターに「本当に黒川は水戸の救世主になりますか?」と聞かれたら、「なれるとも。私は彼を信じている」と即答する。