サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回のテーマは、サッカー史に残る奇談。
■エースがシューズを脱いでプレー「8-1で大勝」
インドでは、サッカー選手の多くがホッケー選手でもあった。ホッケーは、カルカッタ以外の地域ではサッカーを大きくしのぐ人気競技だったが、インドのホッケー選手には裸足でプレーする者が多かった。1936年のベルリン・オリンピックのホッケー競技でインド(正確には英国領インド)は金メダルを獲得したのだが、そのときにこんなことがあった。
決勝戦の相手は地元ドイツ。このとき、インドの選手たちは全員シューズを履いてプレーしていた。インドは圧倒的な優勢で試合を進めていたのだが、後半、エースのディアン・チャンがシューズを脱いで裸足でプレーし始めると、彼の活躍で見る見るうちに点差が開き、8-1で大勝してしまったのである。
ちなみに、このオリンピックにはその前回、1932年のロサンゼルス・オリンピックで銀メダルを獲得した日本のホッケー代表も2大会連続で出場し、各国が22人の選手をエントリーする中、わずか15人の選手で奮闘し、アメリカに5-1、ハンガリーに3-1で勝ち、インドには0-9で敗れたものの、その後の順位決定戦ではデンマークに4-1で快勝して7位となっている。