最近のテレビでは、地元をよく知るタクシー運転手に穴場的な食事処を教えてもらう番組が人気だ。蹴球放浪家・後藤健生は、そのさきがけかもしれない。ワールドカップの取材における“妙味”を、地元のタクシー運転手から伝授されていたのだ。
■ユルゲン・クリンスマンの「ゴール」でドイツ勝利
開幕戦ではアクレディテーション・センターのコンピュータがダウンするという事故(「蹴球放浪記」第101回「ペレのおかげでシステム障害発生」の巻参照)もありましたが、開幕戦はユルゲン・クリンスマン(韓国代表前監督)のゴールでドイツが1対0で勝利して無事に終わりました。
翌日、僕はニューヨークでのイタリア対アイルランド戦を観戦するために、シカゴのオヘア空港にタクシーで向かいました。
そうしたら、タクシー・ドライバーが教えてくれました。
「見ろ、ここの右側にO・J・シンプソンの自宅があるんだぜ」と。
それから、ドライバーは延々とシンプソンの話題について語ってくれました。こちらは、あまり興味ないんですが……。
普通、ワールドカップ開催国で外国人がタクシーに乗ったら「どこの国から来たのか」とか「どこが強そうだ」とか「昨日の試合はどうだったか」とか、ワールドカップの話題になるはずです。まして、こちらは大会のアクレディテーション・カード(大会身分証)を首からぶら下げているんですから……。
しかし、この国ではドライバーの話題はあくまでもO・J・シンプソンなのでした。