サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回のテーマは、「原口元気のゴールをも止めた白い悪魔」。
■5センチ以上も積雪が残った中「キックオフ」強行
ウズベキスタンで行われているAFC U-20女子アジアカップの大会初日、3月3日に、驚くべき試合があった。ピッチの大半に雪が積もったままで、試合が決行されたのだ。
試合はA組の韓国対オーストラリア。いきなり、この組の「首位決定戦」とでも言うべき重要な試合だった。ところが、両ペナルティーエリアとタッチラインから10メートルほどの幅で除雪され、ハーフラインやセンターサークルなど重要なラインの部分も雪が除かれていたのだが、ピッチの中央部は、5センチ以上とみられる積雪が残ったままだった。その状態で、13時キックオフの試合が強行されたのだ。キックオフの午後1時には、まだ横なぐりの雪が吹きつけていた。
当然、プレーは非常に難しくなった。雪は前夜からのもので、その上を選手が走り回るので激しく凸凹ができている。ボールは転がらず、転がっても思わぬ方向に跳ねる。パスなど考えられる状況ではない。ひたすら前に蹴り、サイドの雪のない部分に出せば、そこで何らかのプレーはできるが、サッカーにはならない。
前半に相手GKのミスをついて韓国が先制したが、後半なかばにロングパスを追って抜け出したオーストラリアの選手がペナルティーエリア手前の雪の上に止まったボールをうまく浮かせて前に運び、芝生が露出したエリア内に入ってシュートを決めて同点。そして終了間際には、左CKからオーストラリアが決勝点を決めて2-1で逆転勝ちした。
同じ日には、A組のもう1試合、ウズベキスタン対チャイニーズ・タイペイの試合が3時間遅れの午後4時キックオフで行われた。だが、こちらはピッチ全面がしっかりと除雪されており、ノーマルなサッカーの試合となった。「ホスト国」として自信満々臨んだウズベキスタンがチャイニーズ・タイペイのパスワークに崩され、0-2で敗れたこと以外は、驚きはなかった。