Jリーグなら認められたジーコ「幻のゴール」【移籍金154億円ベリンガム事件で浮上した「サッカー・ルール」の落とし穴】(2)の画像
19歳でレアル・マドリーに加入したジュード・ベリンガム(右)。そして、指示を出す頼れる司令塔のルカ・モドリッチ。 撮影/原壮史(Sony α-1)

 昨年8月、154億円の移籍金でレアル・マドリードに移籍した、イングランド代表のジュード・ベリンガム。20歳のスーパースターへの処分が今、大きな話題になっている。試合終了間際のゴール取り消しをめぐるものだが、サッカージャーナリスト後藤健生は、その根底にある「アディショナルタイム問題」を指摘する。サッカーのルールは、どうあるべきなのか。

■クロスを上げる直前に「笛を吹いていた」?

2:プレーのどのタイミングで笛を吹くのか?

 ベリンガムの“幻のゴール”の場合、ヒル・マンサーノ主審はクロスを上げる直前に笛を吹いていたのだという。

 アディショナルタイムを含めた試合時間が過ぎた瞬間にプレー中だった場合、どのタイミングで笛を吹くのかは主審の裁量に任せられることになる。

 古い話で恐縮だが、1978年のアルゼンチン・ワールドカップではジーコの“幻のゴール”が話題になった。

 ブラジルはグループリーグの初戦でスウェーデンと対戦し、1対1の同点のまま時計の針が90分を指した。ブラジルは右CKを獲得し、ネリーニョが蹴ったボールをジーコが頭で決めて勝利したかと思われた。

 だが、ウェールズ人のクライブ・トーマス主審はネリーニョが蹴ったボールが空中にある瞬間に試合終了のホイッスルを吹いたとして、ジーコの得点は認められず、ブラジルは引き分け発進となってしまった。

 当時は、現在とは違って、あまり長いアディショナルタイムは取られなかったし、「アディショナルタイム表示」というものもなかったので、いつどのタイミングで試合終了のホイッスルが鳴るかは、主審以外の誰にもわからなかった時代だった。だが、それにしてもCKのボールが空中にあるうちに試合終了というのは珍しい出来事だったので、大きな話題になった。

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