大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第132回「サッカーの聖地」ウェンブリー物語(3)カズ、井原、中山、小野他イングランド代表と戦った日本代表選手たちの画像
「初代ウェンブリー」には、屋根を支える支柱がスタンド内に立っていた。入場はゴール裏から。日本代表も、このピッチで戦った。(c)Y.Osumi
 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、「あこがれの場所」。

■北澤、森島、相馬ら「日本代表」がサッカーの聖地へ

 日本代表はただ一度だけ、1995年にこの「初代」ウェンブリー・スタジアムでプレーしている。相手はイングランド代表。「アンブロカップ」という招待大会である。翌年の欧州選手権(EURO)のリハーサル大会として開催されたもので、日本のほかにスウェーデンとブラジルが招待され、4チームで総当たりの試合を行うという大会形式だった。

 当時のFIFAランキングでは、ブラジルが1位、スウェーデンは6位、イングランドは22位、そして日本は33位だった。そのアンブロカップの開幕戦が、ウェンブリーでのイングランド対日本だった。イングランドとしては、「格下」の日本を血祭りにあげて勢いをつけようというところだったのだろう。

 1995年6月3日、午後2時キックオフ。加茂周監督率いる日本代表は、GK前川和也、DFは柱谷哲二をスイーパーに置いて田坂和昭と井原正巳とともに3バックを形成し、右ウイングバックに名良橋晃、左に相馬直樹。中盤は、アンカーに山口素弘、インサイドMFは右に森島寛晃、左に北澤豪、そして2トップにはカズ(三浦知良)と中山雅史が並んだ。交代選手は、後半20分に中山に代わって黒崎比佐志、後半29分に相馬に代わって柳本啓成、そして後半35分に森島に代わって福田正博だった。

 試合は日本が固い守備から速攻をかけるという形で進み、前半は0-0。イングランドは後半3分に右タッチライン際でボールを受けたダレン・アンダートンがアラン・シアラーとのパス交換で中央に入り、ミドルシュートで先制。しかし日本は、そこから果敢に攻め、後半17分、カズの左CKをニアポストに走り込んだ井原が頭で合わせて1-1の同点に追いつく。なおも攻める日本。日本が相手ということもあったのか、この日ウェンブリーを訪れたのは2万1142人という記録的に少ない観客だったのだが、日本人ファンが多く、スタンドは沸きに沸いた。

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