■思い出されるアジアカップ準々決勝敗退

 昨年10月のこのコラムで、日本のサッカーにとっての大きな課題がヘディングであることを書いた。そのときのテーマは、インサイドキックのパスでは8割以上を味方に渡せるのに、なぜヘディングでは4割も渡らないのかという点だった。選手にも指導者にも、ただ頭に当てて前に飛ばせばOK程度の意識しかないのではないかということだった。

 今年1月から2月にかけてカタールで行われたAFCアジアカップでは、大型FWをめがけての相手の単純な放り込みに対する日本のもろさがクローズアップされた。ヘディングでクリアしきれない。クリアしても、そこから上がったボールで競り負け、再び競り負けて日本のゴール前の危険な地域にボールが戻されてしまうという形である。

 準々決勝のイラン戦では、相手のロングスローから何度も危ない形をつくられ、最後はロングスローを起点とした攻めからPKを献上し、決勝点を奪われた。

 このときの日本の守備は、スローの落下点と予測されるニアポスト前の地域にボールに近い位置から守田英正上田綺世、そして伊藤洋輝の3人が並び、他はマンマークについた。イランの屈強のセンターバック、ショジャエ・ハリルザデには、スローの直前に南野拓実がついた。しかし、南野はあっさりとハリルザデに競り負け、落ちたボールは伊藤がクリアしたが、拾われて今度はファーポストに入れられた。

 落下点にはイランのFWモハマド・モヘビと毎熊晟矢。これも毎熊が競り負け、落ちたところで板倉滉と伊藤の間で混乱が起き、走り込んできたDFホセイン・カナニにつけ込まれてPKが生まれたのである。右足が大きく上がっていたMFアリレザ・ジャハンバフシュのスローインはともかく、ヘディングの競り合いで2回続けて負けたのが痛かった。

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