サッカー日本代表はアジアカップの準々決勝で敗れ、ACLのラウンド16では2つのJリーグクラブが姿を消した。これらの敗退には、ある共通点があるとサッカージャーナリスト大住良之は考える。「ヘディングの重要性」を、日本サッカー界は見落としているのだ。
■Jリーグ屈指のテクニシャンに欠けていたもの
DF丸山祐市からタッチライン沿いのFWマルシーニョにパスが渡ると、マルシーニョはワンタッチでボールを浮かせ、ペナルティーエリアに走り込むDF三浦颯太に送る。相手ゴールに背を向け、ジャンプしながら三浦が胸で落とすと、サポートしたMF山本悠樹が拾う。中央にはMF脇坂泰斗がタイミングよく走り込む。そこに山本から正確なパス。脇坂の頭にピタリと合う…はずだった。しかし、脇坂のヘディングは大きくゴールのバーを超えた。
2月20日に等々力陸上競技場で行われたAFCチャンピオンズリーグ・ラウンド16の第2戦。ホームに中国の山東泰山FCを迎えた川崎フロンターレは、第1戦3-2の勝利というアドバンテージを生かせず、2-4で敗れて敗退が決まった。立ち上がりにDF大南拓磨が自陣ペナルティーエリア手前でボールを奪われて先制点を喫し、25分には脇坂の左CKが直接相手へのパスになってしまい、カウンターを許して0-2とされたところで、試合は非常に厳しいものとなった。
だが前半30分に三浦の見事な攻め上がりと左足シュートで1点を返すと、同点ゴールを目指して川崎の攻撃は一挙にスピードアップした。そして迎えたのが、前半39分の決定的なチャンス、脇坂のヘディングのシーンだった。
脇坂は今季の川崎のキャプテンであり、Jリーグきってのテクニシャンである。抜群の技術とセンスで攻撃をつくるだけでなく、ペナルティーエリアに走り込んでボールを受け、シュートを決める能力ももっている。だが、このヘディングはひどかった。走り込むタイミングは完璧だったし、山本のパスも申し分なかった。まさに絶好機で、十分なヘディングシュートができるはずの状況だった。だが、脇坂は下から突き上げるようなヘディングでゴールを大きく外してしまったのだ。