■3分16秒の“間”
その試合は、会場を温めるかのように開始7分でゴールが生まれた。しかも、観る人の体温を上げるようなゴラッソだった。決めたのは京都サンガF.C.から新加入の山田楓喜だ。滋賀県出身の現在22歳のMFは、直接FKのチャンスを見事に生かす
ところが、その直前には心を揺り動かされるような出来事もあった。2分18秒の場面で、横浜F・マリノスのGKポープ・ウィリアムがペナルティエリアの外側でボールを処理。その際、ポープの腕にボールが当たったようにも見えたし、その処理がうまく行かずに東京Vの木村勇大がボールを回収してプレーしようとしたところを、ポープが引っ張って倒してしまっている。主審が手にしたのはイエローカードだったが、「レッドカード」という言葉も聞こえてくる状況だった。
東京Vから見れば、ペナルティエリアの左角手前でのFK。ボールの前には見木友哉と山田の2人が立つ。国立競技場のモニターには「VAR」の文字が浮かび、さらに、オンフィールドレビューも行われた。「退場確認中」と表記もなされた中で時間は過ぎる。
主審が改めてFKと判断を表明したのは5分34秒だったので、3分16秒もの間、山田はボールの前に立っていた。寒さの影響も心配されたが、細かいステップを踏んだ22歳は左足を振りぬいてボールをゴールネットに突き刺す。ゴール右上の角を見事に射抜いた一発で、国立競技場にいた誰もが驚くプレーだった。