■余ったチケットをスタジアムの近所で売りさばく
ツアーは「飛行機とホテルを予約して、チケットを確保すればよい」というものではありません。
当時のワールドカップ・ツアーの難しいところは、現在と違って一つひとつの試合のチケットがバラでは買えなかった点です。
たとえば、ブラジルが出場する試合を見たいと思ったとします。ブラジルはグループCに属してスウェーデン、コスタリカ、スコットランドと戦うのですが、会場はすべてトリノのスタディオ・デッレ・アルピでした。
ワールドカップのために新設されたデッレ・アルピは陸上競技兼用で、規模が大きすぎたために不人気で、その後、取り壊されて現在はユベントス・スタジアム(アリアンツ・スタジアム)に生まれ変わっています。
その場合、たとえば「スウェーデン戦のチケットだけ」という形では購入できなかったのです。その試合のチケットを手に入れるためには、デッレ・アルピで行われる5試合すべてを一緒に購入しなければなりませんでした。
他のスタジアムも同様です。
ですから、ツアーを計画する際には、どのチケットを購入するのか、よく考えないと、無駄な出費になってしまいます。まあ、デッレ・アルピの場合はグループリーグはすべてブラジル戦、その他、ラウンド16(ブラジルが1位通過なら、やはりブラジルの試合)と準決勝でしたから好カードばかりだったのですが……。
ちなみに、最終的に余ってしまったチケットは、スタジアムの近所で売りさばくしかありません(「蹴球放浪記」第137回「各国語、各国通貨が飛び交うダフ屋の現場」の巻)。