■絶好のシミュレーションだった
3バックにしなかった理由は2つあると思われる。一つはスカッドの問題で、もう一つは成長を求めたからではないだろうか。
カタールワールドカップで欧州の強豪国を倒したうえでのベスト16を手にしたものの、ゲームを支配することはできなかった。そのクロアチア戦翌日のドーハ市内で、選手は一様に次大会に向けての“アップデート”の必要性を口にしていた。つまりは、防戦だけでなくボールを握っての勝利である。そのため、このアジアカップでは4バックで勝ち抜きたいというイメージがあったはずだ。
アジアカップは真剣勝負の舞台であるが、同時に、絶好のシミュレーション機会でもあった。アジアカップは4つの国で争うグループステージで勝ち上がり、その後、一発勝負の決勝トーナメントを戦う。2026年大会では過去大会と変更点があるものの、日本代表が参加できるこの大会形式の国際舞台はワールドカップ以外にはアジアカップしかない。
今大会の優勝のために試合ごとに遮二無二の選択肢を取るよりも、2026年W杯を見据えて成長するために4バックで勝ち抜きたいという大きなイメージがあったのではないか。
一方で、スカッド面で3バックにしがたい理由があったことも事実である――。
(後編に続く)