■「面白い前半だったなあ」

 あの「赤鬼」も歳を重ねた。

「日本と10回やったら1回は勝てるかもしれない。それが明日かもしれない」

 トルシエ監督は前日の会見でそんなことを言った。

「引き分けはあっても、10回じゃ足りないかな?」

 試合は11分、南野拓実のゴールで日本が先制した。

 だが、この後の展開は想像していないものになった。

 トルシエが耐えるだけの45分を選択しなかったからだ。

 ベトナムは16分、グエン・ディン・バックが同点ゴールを決めた。

 森保一監督の前まで走って来てガッツポーズ。

 さらに33分、今度はファム・トゥアン・ハイが逆転のゴールだ。

 スタンドは沸いた。

 私の後ろにベトナムのファンが何人か座っていたが、もちろん歓喜していた。

 前半をこのまま終わることができれば「すごいぞ!ベトナム」だ。

 なぜか、ベトナムをもっと応援したくなっていた。

 だが、というのも変だが、45分に南野拓実が2点目。

 2-2。

 トルシエがベンチでモニターを見つめている。

 そして、ロスタイムに中村敬斗のきれいな3点目が入ってしまった。

 3-2、これで試合は決まった。

 日本は後半、上田絢世が4点目を加えて無事、初戦を終えることができた。

「面白い前半だったなあ」

 

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