トレーニングマッチとは思えない光景だった。1月28日の12時17分。バックスタンド側からピッチの外に出たストライカーに対し、観客席から大きな拍手が送られたのだ。
その称賛を一身に受けたのは、FWエリソン。川崎フロンターレに今季から加入したブラジル人FWだ。
この日、川崎はサガン鳥栖とトレーニングマッチを行った。“アウェイ”に乗り込んでの一戦に、このエリソンも出場した。対外試合はここまでにも出場しているが、トレーニングをこなすほどに、そのしなやかで強靭な体が“怖さ”を帯びていくのは誰の目にも明らかだった。鳥栖戦前日の27日に行われたチーム内のミニゲームではフィジカルの強靭さを見せつけるかのような豪快なヘディング弾を決めていたのは、この日の活躍を予兆させるのに十分なプレーだった。
そして鳥栖戦の1本目の9分に、先制弾を決める。相手ペナルティエリアの外でボールを持つや、相手選手をうまくいなして左足を炸裂させた豪快なもの。インパクトの強さが印象的な一発だが、試合後にエリソン自身は「相手のパスミスによって鳥栖のGKが守備のポジショニングじゃなかったので、トラップして自分の得意な強いシュートを決めた」と振り返ったように、冷静さとしたたかさがもたらしたゴールだった。