■試合後の謙虚な言葉
そのエリソンは、マルシーニョのアシストで35分にも得点を決める。左サイドを疾走した背番号23の動きに合わせてペナルティエリア内でうまくポジションを取る。そして、相手選手のマークに合いながらも、左足で見事に合わせたものだ。
「マルシーニョのクオリティとスピードは分かっているので、裏に運んだところで自分はダイレクトでシュートできるように準備していました」。エリソンはこう振り返るように、圧倒的なフィジカルを持ちながらもそれに頼らないプレーが特徴であることを示した。
この試合では、得点だけでなく起点となる動きもこなし、フェイントをかけながらのドリブルも披露して常に脅威になった。得点だけが魅力でないことは、観ている人に雄弁に伝わったはずだ。
試合を終えて更衣室から出てきたエリソンに2得点を決めた手応えについて聞くと、「ゴールはすごく嬉しいが、いつも思うのはみんなのゴールであること。仲間の助けがあってゴールできたと思うし、選手だけじゃなく、スタッフ、全て含めて、チームのゴールだと思っている」と謙虚に話す。
さらに、「サッカーを愛しているし、それが自分の仕事だし、とにかく仲間を助けて、チームのためにやっていきたい」とも話す。2得点という結果に加えてその献身性があればこそ、冒頭に書いたように観客席から大きな拍手が起きたのだ。
そして、観る人の心を掴んだプレーは他にもあった――。
(取材・文/中地拓也)
(後編へ続く)