■前回大会との表情の違い

 2024年元日のタイ戦(東京・国立)で約2年ぶりの代表ゴールを決めて以来、彼のフィニッシュ感覚は日に日に研ぎ澄まされている。

「今回、合宿に入ってから、すごくシュートに関してはいい感触が自分の中であって、メンタル的には特に変わってないんですけど、いいフィーリングがあったんで、それでこの初戦でチームに貢献することができてよかったなと思います」と本人も自信をのぞかせるが、代表でこれだけ明るい表情を見せるのは本当に久しぶりだ。

 南野にとって代表初の大舞台となった5年前の2019年アジアカップ(UAE)では試合を重ねるごとにスランプに陥り、どんどん顔が曇り、口が重くなっていった。それは10番を背負った2022年カタールW杯も同じ。肩に力が入って空回りし、最終的にクロアチア戦でのPK失敗という最悪の結末を迎えたのだ。

 そういった苦い過去と決別し、自然体を取り戻した南野は初めて代表でのプレーを心底、楽しめているのではないか。そういったマインドを取り戻した男は強い。このベトナム戦は完全復活を大いに印象付けるものだった。

(取材・文/元川悦子)

(後編へ続く)

(2)へ続く
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