■110年前のルール改正

 レフェリーも「テン・ヤード!」ときつい口調で助言してくれる。そんなこと言われなくても、守備側がボールから9.15メートル離れなければならないというルール自体は、誰もが知っている。だが、それを進んで実践する選手はまず皆無と言ってよい。

 私が監督している女子チームの選手たちも、FKになるとまず7~8メートルのところに壁をつくる。そしてレフェリーに促されて下がらなければならない羽目になり、結局はボールから12メートルはあろうかという距離まで下がらされ、壁の用をなさなくなってしまうことが多い。

 FKのときに守備側の選手が10ヤード離れなければならないと決まったのは1913年のことである。前年までは6ヤード(5.5メートル)ということになっていた。このルール改正を決議したのは、この年の6月14日にポートラッシュという小さなリゾートタウンで行われた国際サッカー評議会(IFAB)の年次総会だった。アイルランド島北部の海に面するポートラッシュは、現在は「北アイルランド」に含まれている。

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