■サッカー界の謎

 提案したのはFA、すなわちイングランド・サッカー協会だった。ちなみに、1882年に設立されてサッカーのルールをつかさどってきたIFABは、30年間にわたってイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの4協会だけで構成されていた。そこに1904年設立の国際サッカー連盟(FIFA)が初めてメンバーとして加わったのが、この1913年の年次総会だった。当時は、ルールの改正には、それぞれの組織が2票ずつ持ち、計10票のうち、8票を獲得しなければならなかったが、このイングランドの提案が何票を得て承認されたのかは、当日の議事録には記載されていない。

 ともかく、「FKのときに10ヤード離れなければならない」というルールが誕生したのは、第一次世界大戦前、日本でいうと大正2年に当たる1913年の6月14日ということになる。いまからちょうど110年半ほど前のことである。日本サッカー協会は1921年設立なので、まだこの世の中に存在していない。

 ところがこの「10ヤード」という距離、110年間も変わらないというのに、いまだに世界中のサッカー選手が例外なくその見当がつかないという代物なのである。「サッカー10不思議」のひとつに入るのは間違いない。

(2)へ続く
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