■森保一監督&名波コーチとの模索
後半6分の田中碧の先制点の起点となるパス出しに始まり、29分のオウンゴールにつながった左CKを蹴り、川村の4点目のシーンでも菅原由勢(AZ)との巧みなワンツーをお膳立て。ロスタイムの南野の5点目も相手に当たりながらも確実にチャンスボールを出した。
「プレーに余裕を感じた? いや、相手が弱かっただけです」と不敵な笑みを浮かべつつ、プライドを感じさせた堂安。この日、最大の収穫は伊東との共存にメドが立ったことだろう。
後半23分に伊東が退くまでの間は2人が右と中央を頻繁に入れ替えながらプレー。攻撃に新たなエッセンスをもたらしていた。
「(伊東とのポジションチェンジは)監督に試合前から言われていたこと。FWで使うかもしれないという話ですけど、試合中はFWのところに入ってもいいし、右に流れてもいいというのは、森保さん、名波(浩コーチ)さんも言っていましたし、純也君もチームで前をやったりしているので、逆に生かしてあげられるかなと思った。初めてにしてはよかったのかなという手ごたえがあります」
堂安も嬉しそうにコメントしていたが、アジアカップに向けて1つのオプションが生まれたと言っていい。右の槍である伊東は外せないが、堂安というパンチ力と決定力、アイディアを兼ね備えたタレントをベンチに置いておく時間が長くなるのももったいない。堂安の新たな使い道を森保一監督や名波コーチも模索した結果、こういった形が生まれたのではないか。
加えて言うと、今回は鎌田大地(ラツィオ)が選外。トップ下やセカンドストライカーのポジションがやや手薄になっている。そこを久保建英(レアル・ソシエダ)だけに任せておくのは負担が大きすぎるし、マルチ型の南野はトップ、旗手怜央(セルティック)はボランチや左サイドにも入らなければいけない。であれば、堂安を真ん中に持ってきた方がいい。日本攻撃陣の新たな武器がタイ戦で生まれたことを前向きに捉えたいものである。
(取材・文/元川悦子)
(後編へ続く)