■映画館で得心
ところが、です。
1981年に、僕はワールドユース選手権(現U-20ワールドカップ)を観戦にオーストラリアに行ったのです。開幕戦は開催国オーストラリア対前回優勝のアルゼンチン。会場はシドニー・クリケットグラウンド(SCG)の予定でした。ところが、SCGの照明塔が危険な状態であることが判明したので、急遽、隣にあるシドニー・スポーツグラウンド(SSG)に変更になりました。
SSGのスタンドに座ってグラウンドを見て、僕はビックリしました。
陸上競技場であるはずのSSGは、グラウンド一面が芝生だったのです。つまり、陸上競技のトラック部分にも芝生が張られていたのです。たしかに、走路となる部分にはラインが引かれていますから。しかし、そこには芝生が張られているのです……。
昔は、芝生のトラックというものがあったということを、当時の僕は知りませんでした。
1981年に公開された映画に「炎のランナー」という英国映画がありました(ヒュー・ハドソン監督)。1924年のパリ・オリンピックを目指すランナーたちの物語です。
日本で公開されたのは翌1982年。僕も早速見に行きました。そうしたら、主人公たちが走っている大学のグラウンドのトラックには芝生が張ってあったのです。「ああ、昔はそういうトラックがあったんだ」と僕はそこで初めて納得したのです。