■天皇杯PK戦へ込めた気持ち
そして、サポーターへの想いも口にする。「みんなが望んだ結果ではなかったと思うし、フラストレーションを溜めさせてしまった試合もかなり多かったと思いますけど、決勝の前に、最後に彼らと一緒に笑って終わりたいっていう思いがあったので、その姿を見ることができて、はい、すごくうれしかったです」。蔚山戦後のミックスゾーンで筆者が話した時間は6分29秒。その中で最も晴れ晴れとした表情だった。
ここまで3回にわたったこの記事で、山根のタイトルに懸ける思いの強さはすでに書いた。それが天皇杯決勝において最も表に現れたのが、PK戦でキッカーを務めたあとではないか。キックを成功させるや口を大きく開いてガッツポーズを見せ、そして、サポーターを煽った。
この場面について聞いたのは、その感情の要因だ。あの緊迫感ある試合だからなのか、それとも、自分自身のプレッシャーから解放されたからなのか、それとも1年間のシーズンを振り返ってのものなのか、3つを挙げて聞くと、「うーん…」と少し間をおいて、以下のように言葉にしている。
「一番大きいものでいうと、絶対に優勝したかったっていう。僕のキックで終わらせるわけにはいかないと思うんですよ。フロンターレ側のピッチでPK戦をできたので、サポーターと一緒に勝ちをもぎ取りに行こうっていうのも含めて、やっぱり本当にみんなに優勝届けたかったっていう気持ちが大きかった」
喜びを爆発させると、ピッチの上で足を伸ばしており、この試合ではそれまで見られなかった行動だった。PK戦まで隠していたのかを聞くと、「後半が終わる前ぐらいからけっこう足が来てて、完全につってたわけじゃなかったんですけど、延長もちょっと考えながらやっててきつかったので。それで、PKを蹴ったあとに喜んでたらすごく力んじゃって、内転筋がもうガチガチになっちゃって、普通に歩けなかったんですよ」と言う。
そして、「もしPKがもう1周回ってきてたら、蹴れなかったです」とも語った。