■柏が見つけた「本物の9番」
2020年に32試合に出場して28ゴールでJリーグ得点王となった柏のオルンガ。前年の2019年にはJ2最終節の京都戦(13-1)で何と8得点を決めるなど柏をJ1昇格に導き、2020年にはJ1のライバルクラブを恐れさせ続けた。彼はケニアのナイロビで生まれ、大学での学業のため22歳まで祖国を離れなかったせいもあってか、欧州ではまったく注目されなかった。
2016年に初めて欧州に渡り、スウェーデンのユールゴルデンに所属した後、2017年には中国の貴州智誠に移籍、2018年にはスペインのジローナに貸し出された。しかしユールゴルデンで1シーズンに12ゴール(出場27試合)を挙げた後、貴州では2ゴール、ジローナでは半年だけながら3ゴールしか記録できなかった。このオルンガに目をつけたのが柏だった。2018年8月、オルンガは柏に完全移籍する。
このシーズンは先発出場わずか4試合、交代出場6試合とあまり試合にからめず、わずか3ゴールにとどまり、柏はJ2に降格した。悪く言えば「せわしない」Jリーグのサッカーのなかで、オルンガの「アフリカのリズム」はひどく場違いに見えた。しかし2019年、J2の柏で2期目の監督をスタートしたネルシーニョは、他にはないオルンガの能力に注目していたに違いない。シーズン序盤から辛抱強く起用し、5月の声を聞くとともに得点の量産が始まるのである。
柏での緻密な指導を受けて「本物の9番」に変貌したオルンガは、このシーズンのJ2リーグで30試合に出場して27ゴールをマーク、J2優勝、そしてJ1復帰へのキーファクターとなった。そして2020年のJ1でも28ゴールを記録して得点王となり、柏はJ1復帰1年目で7位と躍進した。だが翌年の1月、突然カタールのアルドゥハイルに移籍し、日本での活躍は終わるのである。