■「もろ刃の剣」の皮肉

 その浦和がようやく待望の「真の9番」を手に入れたのが2017年。新潟からブラジル人FWラファエル・シルバを獲得したことだった。浦和は興梠とラファエル・シルバのコンビで爆発的な得点力を発揮、5月末までの12試合でチームの総得点は33にも及んだ。前年、当時のシーズン最多勝点に並ぶ74勝ち点を挙げたときには、34試合で61得点だったことを考えれば、2017シーズンの「破壊力アップ」は明白だった。順調に進めば、Jリーグの歴史に残る「圧倒的王者」が誕生する可能性は十分あった。

 だが「真の9番」は「もろ刃の剣」だったかもしれない。ラファエル・シルバの負傷とAFCチャンピオンズリーグACL)による疲労が重なった6月、浦和の調子は大きく落ちた。相手チームは浦和の破壊力を警戒して守備を固め、カウンターで浦和から勝点を奪うようになった。6月から7月にかけて浦和は8戦して2勝6敗というひどい状態に陥り、ミシャは解任されて、浦和の輝きに満ちた時代は突然終焉を迎えるのである。(後任の堀孝史監督の下で、このシーズン終盤にはACLで2回目の優勝を飾るが、そのサッカーは堅守をベースにしたものとなっていた)。

 そして皮肉なことに、このシーズンのJリーグで、興梠はキャリアハイの20ゴールを記録する。2006年に得点王になったFWワシントン(ブラジル)以来、実に11年ぶりの、浦和から「オーバー20」の誕生だった。

  1. 1
  2. 2
  3. 3