■「鹿島の新たなスタイルを構築するには時間がかかる」
3月半ばからレネ監督がようやく指揮をと執り始めたが、7月には鈴木優磨と並ぶ重要な得点源である上田綺世(フェイエノールト)が海外移籍を決断。そのダメージが癒えないうちに、クラブ側はレネ監督とのチームマネージメントに対する考え方を相違を理由に監督交代を決断する。
後任に指名されたのは、もちろん岩政コーチ。すでに監督代行を務めていたとはいえ、プロコーチ半年の彼をいきなり指揮官に据えるというのは、やはりリスクが高かった。
だからこそ、岩政監督は「鹿島の新たなスタイルを構築するには時間がかかる。この10年でタイトルを取ってきた(サンフレッチェ)広島や川崎(フロンターレ)、マリノスは長い時間をかけてその作業をやってきた」と語り、すぐには結果が出ないことをあらかじめ強調していたのだ。
それを鹿島強化部も承知していたはず。であれば、ある程度、腰を据えてサポートすべきだったのではないか。吉岡宗重フットボールダイレクター(FD)も最初はそういうスタンスを示していた。昨季J1・5位、国内無冠という結果もやむを得ないと考え、2023年に勝負をかけたのだろう。
ただ、今季に向けての補強が弱かった。昌子源や植田直通、垣田裕暉らクラブOBを呼び戻し、知念慶らを補強したものの、外国人助っ人は契約上入れ替えることができなかった。岩政監督としては鈴木優磨と並ぶ点取り屋がほしかったはずだが、「バジェット」という理由で新戦力は得られなかった。
それが響き、今季の鹿島はヴィッセル神戸、マリノス、名古屋グランパスといった上位陣に軒並み勝てず、昨季と同じ5位にとどまった。「すべては勝利のために」を哲学とする鹿島にとって、この結果は受け入れられないものだったのだろう。