■「バルサ化」と対極にあるハイプレス戦法
迎えた今シーズン。吉田監督はキャンプから「バルサ化」と対極にあるハイプレス戦法を熟成させた。最前線ではカタールW杯のバックアップメンバーを断り、オフの間に満身創痍だった体を完治させたFW大迫勇也が復活を遂げていた。
ハイプレスで奪ったボールをキープに長け、周囲も使える大迫に素早く託す堅守速攻がこれで可能になる。J1リーグ優勝後に吉田監督はこんな言葉を残している。
「シーズンが開幕する前は、メディアのみなさんも含めて誰一人として、ヴィッセル神戸が優勝する姿を想像できなかったと思います」
新生・神戸に感じていた手応えは、開幕から白星を積み重ね、首位を快走した軌跡に色濃く反映された。ただ、一方で問題も生まれていた。ハイプレス戦法のなかで居場所を失ったイニエスタの心境に、時間の経過とともに変化が生じていたからだ。
(取材・文/藤江直人)