■「来年に向けての大きな12分だった」

 そんな大関が、ついに公式戦デビューを迎えた。12月12日に行われたACL蔚山戦で、川崎の今季のラストゲームでのことである。2点を先行しながら追いつかれ、同点で迎えた78分の場面。ACL全勝を目指す鬼木達監督は、山根視来山村和也とともにピッチに送り出した。

 この日プレーしたのは12分+アディショナルタイム。公式記録では12分ではあったものの、大関にとっては自信を手にし、そして今後の道を切り拓く時間だった。プロデビュー戦後の“ミックスゾーンデビュー”の第一声は「よかったです。やっと出れました」と笑顔で語ったもの。ただ、「すごい嬉しかったんですけど、ど緊張してて、最初テンパりまくったプレーしちゃってチームに迷惑かけちゃったんで、そこは反省しなきゃいけない」とも続けた。

 それでも、「守備で(自分のプレーが)出せたことで、そこから試合に入れた感触があります」と話すように、徐々にボールに絡んでいく。そして、「試合に入れてから、攻撃面では自分のプレーを出せたので、そこは本当に自信持っていいのかなって感じましたし、それを蔚山相手にできたので、すごい良かった。守備でも少しは成長が見えたので、手応えがありました」と得たものの大きさを感じた。

 大関はバイエルン・ミュンヘンと国立競技場で対戦した親善試合に出場した。当然、チームとして設定している他クラブとのトレーニングマッチにも出場している。しかし、勝点を懸けた真剣勝負とはどうしても違う。公式戦でなければ感じられないものがある。それは、時間の長さだけは計れない。

「来年に向けての大きな12分だった」

 こう話す表情は、焦りを吐露したときのものとはまったく違うものになっていた。

(取材・文/中地拓也)

(後編へ続く)

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