■「こんなに人をワクワクさせる選手がいるんだ」
練馬区で生まれた小泉はFC東京の下部組織でボールを蹴っていたが、ユースには昇格できず、前橋育英から青山学院大学に進む。そして練習参加が実る形で2019年、J2に昇格するFC琉球に加入。“沖縄の青い海に守備的なサッカーは似合わない”と、攻撃的なスタイルを掲げる樋口靖洋監督のもとで、小泉は4月にようやく公式戦デビューできたが、終盤に投入されても結果で応えることができず、ベンチ入りもままならない日々を過ごしていた。
FC琉球に小野がやってきたのは同年の8月。当時のことを小野は「もう初日ですけれども、彼がこのチームで一番うまいのに、なんで試合に出てないのかという疑問が浮かんで、他の選手たちにいろいろ聞きながらという出会いだった」と語る。
”天才”と呼ばれ、3度のW杯に出場し、世界を渡り歩いた小野をして「こんなに人をワクワクさせる選手がいるんだな」と言わしめる小泉にとって、小野は生きたお手本となった。それは技術的なことやサッカー面に限らない。
「学んだこと……そうですね。一番はシンジさん、常に明るくて、楽しくて。ハッピーで。そういう雰囲気をすごく、常に持ってる方なので。人としてというか、ピッチ外でもポジティブで楽しくて。幸せじゃないといいプレーなんてできるわけないでしょって言っていたことが、すごく印象に残っていて。それが何だろう……サッカーだけじゃなくて、人生の、人としての豊さを大事にしようって。僕自身もいろんなことがあって、そう思うようになったので。その言葉はすごく印象に残ってます」
小野と同じチームで過ごしたのは一年半だったが、小泉にとってかけがえのない時間となった。そして小泉が浦和に来て3シーズン目となる今年、心身ともに苦しんだ時期にも、小野の言葉が心の支えとなった。
(取材・文/河治良幸)
(後編へ続く)