■抱える人権問題

 世界中から非難されていた女性差別については、アバヤ(全身を覆う黒いロングコートふうの女性の衣装)着用義務を撤廃し、女性の自動車運転を解禁、さらに女性の自由を認めるさまざまな規制をなくした。

 ただ、2018年10月にトルコのイスタンブールで起こったサウジアラビアのジャーナリスト殺害事件(イスタンブールのサウジアラビア大使館内)では、ムハンマド皇太子が殺害計画を承認していたとアメリカの情報機関が認定し、国際的な非難を受けるようになる。ムハンマド皇太子は2015年1月に国防大臣になっていたのだが、その最初の仕事が政権が変わったイエメンへの空爆だったこともあり、イスタンブールの事件でムハンマド皇太子のイメージは著しく低下した。

 しかしムハンマド皇太子を強く批判していたアメリカがこのところ態度を軟化、昨年にはジョー・バイデン大統領がサウジアラビアを訪問してムハンマド皇太子と会談、今年もアントニー・ブリンケン国務長官がサウジアラビアを訪問した。人権擁護を訴える人びとはサウジアラビアを「残忍な王国」と非難をやめないが、アメリカの軟化により、ムハンマド皇太子の国際舞台への「復権」はなったと見られている。何よりも、サウジアラビアはアメリカの兵器の主要輸入国なのである。

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