
サッカーは年々、進歩している。近年では、競技を取り巻くテクノロジーも驚くべき早さで進歩している。こうした進化と、競技と我々はいかに共存していくべきなのか。サッカージャーナリスト・後藤健生が考察する。
■釣り合わない「重さ」
VARによってハンドが摘発されて、それによって相手チームにPKが与えられて試合が決まってしまう。決勝戦の場合だったら、それによって優勝の行方が左右される。
そのため、VAR導入以後、ハンドリングの反則の解釈にはさまざまな条件が付け加えられ、規則は次第に複雑怪奇なものとなっていった。
やれ「腕が体から離れていた」だの、「不自然な動きをした」だの、様々な文言が積み重なってきた。しかし、細かく定義をすればするほど、議論は複雑化して、一向にすっきりしない。そして、VARによるハンドの判定に時間がかかって、アディショナルタイム長時間化の原因になってきている。
相手に大怪我を負わせるような悪質なタックルなどと比べて、ハンドは明らかに軽い反則である。たとえば、そのままではゴールに入ってしまうようなシュートをDFが手で止めたというのなら、それは重大な反則だ(今から数十年前には、そんなプレーを見たことがあるが、当時はそれでも退場にはならなかった)。
だが、故意ではないのに(この「故意」という言葉が、また大きな議論を呼ぶ)手に当たってしまったような場面で判定に時間をかけ、結果として勝敗の流れを決めてしまうというのは、起こった反則の重さと判定による影響の重さが釣り合わないのではないか。