■中東の感覚

 アラブ人同士は服装や言葉の訛りで相手がどこの国の人なのか、だいたい分かるそうですが、残念ながら、僕たちには相手が何人なのか、見分けがつきません。「ディスターシャ」とか「トーブ」と呼ばれる真っ白な民族衣装を着たアラブ人は、誰もが同じに見えます。

 ですから、「サウジアラビアにいるのだから話している相手はサウジ人だ」と思いがちですが、実際には各国の人が入り混じっているのです。サウジアラビアは裕福なので外国人労働者も多いのです。

 僕が初めてサウジアラビアに行ったのは1997年のフランス・ワールドカップ1次予選の時でした(「蹴球放浪記」第11回「ジッダ空港放置プレー」の巻参照)。ジッダでマレーシアとの試合を取材してから、首都のリヤドに移動してサウジアラビア協会やアルヒラルなどのクラブを取材に行きました。

 協会でお世話になった通訳には、何日も連続でお付き合いいただいたのですが、どことなく他の協会役員たちと違った雰囲気がありました。協会の役員は王族をはじめ非常に裕福な人が多く、仕事ぶりものんびりしています。そして、インタビューの途中でも時間になると、「あ、お祈りの時間だから」とか言って席を外します(お祈りが終わると戻ってきて、何事もなかったかのように話の続きをします)。

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