現在、世界のクラブでトップを競っているのがレアル・マドリードだ。率いるのは、カルロ・アンチェロッティ。カルチョの国が生んだ名将だ。今から20年以上前、蹴球放浪家・後藤健生は若きアンチェロッティにインタビューしていた。
■イタリアでの長期取材
カルロ・アンチェロッティ、64歳。現在はレアル・マドリードの監督であり、来年夏からはブラジル代表監督に就任すると報じられている世界的な名指揮官ですが、今回はそのアンチェロッティの若き日のお話です。
僕がアンチェロッティのインタビューをしたのは2000年4月。『サッカー批評』の特集の取材でイタリアを訪問した時のことでした。
4月1日に成田空港を出発して26日に帰国するという長期取材旅行。今から思うとなんとも豪勢な取材です。2002年ワールドカップの開催を前に、当時は日本のサッカー界にも出版業界にも、それだけ潤沢な資金が回っていたというわけです。
イタリアの小さなクラブと中堅クラブ、そしてビッグクラブのクラブ経営や育成の実態を取材しようということで、僕たちは、まずイタリア半島南部のレッジョ・カラブリアに向かい、レッジーナを取材。その後、中堅クラブの代表として、1990年代に当時のUEFAで2度の優勝を飾っていたパルマを取材。地元の乳製品を中心とする食品会社「パルマラット」がスポンサーに付いて、当時のパルマは経営も安定していました。
その後、レッジーナには中村俊輔が加入。一方、パルマでは中田英寿が活躍することになるのですが、その両クラブをいち早く取材していたのですから、当時の『サッカー批評』には“大いなる先見の明”があったということになります。
レッジーナなどという地方クラブに外国人記者が取材に来るのも珍しかったからでしょう。レッジーナのパスクアーレ・フォーティ会長は大歓迎してくれて、「誰か良い日本人選手いないかい?」などと言っていました。社交辞令のようなものだとばかり思っていたんですが、後から思うとどうやら会長は本気だったようです。