■提案からの変更点
この決議は直近の試合から実行に移されたが、国際試合が少なかった時代、実際に「キャップ」がつくられ、贈られたのは、翌1887年2月5日にシェフィールドのブラモール・レイン(シェフィールド・ユナイテッドのホームスタジアム)で行われたアイルランドとの国際試合だった。この試合に出場した11人に、試合後、初めて「キャップ」が贈られたのである。
ただジャクソンの提案と違っていたのは、キャップは白のシルク製ではなく、ロイヤル・ブルーのベルベット製だった。試合の日付が赤いバラの上に刺しゅうされていた。対戦相手名はなかった。
英国外にはまだサッカー協会など皆無だったこの時代、「国際試合」は、英国内にできていた4つの協会の対抗戦(ホームインターナショナル)に限られていた。すなわち、イングランド、スコットランド、ウェールズ、そしてアイルランドが互いに対戦するだけで、年に3試合が原則だった。そして試合は、通常毎年シーズンの終盤、2月から4月にかけて開催されていた。
ちなみに、当時はまだ現在のアイルランド共和国は独立しておらず、アイルランド島全域が英国内であった。この当時の「アイルランド・サッカー協会」とは、現在は北アイルランド協会に引き継がれている協会である。現在の「アイルランド共和国サッカー協会」の誕生は、この国が英国からの独立を国際的に認められた1921年のことだった。