■「後ろから締めるべきところはもっと意識してやらないといけない」
10カ月前のカタールではケガに苦しみ、ようやく復帰したクロアチア戦でミスを連発するなど不安定なパフォーマンスに終始。「今大会はトップパフォーマンスを出せた試合は1つもなかった。ケガを含めてホント、嫌になりますね」と顔をゆがめながら吐き捨てるほどだった。日頃、冷静沈着な冨安がメディアの前でそこまで激しく感情を露にしたのは初めて。それだけ本人の中では度重なるケガやコンディション調整の難しさに苛立ちを拭えなかったのだろう。
しかしながら、ドイツ戦で完全復活したことで、彼は確固たる自信を取り戻した様子だ。続くトルコ戦でも4-2になった直後の後半34分から町田浩樹(サンジロワーズ)と代わって途中出場。完璧な守りを見せつけ、追いすがるトルコ攻撃陣を断ち切った。
「正直言って、3-0の後はちょっと緩みが出たのかなと。アーセナルでもよくありますけど、やっぱり試合を殺しきる、決めきるところはやっていかないと。後ろから締めるべきところはもっと意識してやらないといけないですね。それに欧州勢と敵地で連勝というのも当たり前になるべきだと僕は思います」と冨安は世界トップ基準のスタンダードを改めて示した。
そういう意識こそが、新キャプテン・遠藤航(リバプール)の掲げた「W杯優勝」につながっていく。それを具現化する意味でも、ピッチ内外で冨安が果たす役割は非常に大きい。それを我々は改めて再認識させられた。
(取材・文/元川悦子)