■「フロンターレで川崎全体がそういう風になればいい」
三郎さんは「せっかく来たんだったら楽しんで帰ってもらったら嬉しいじゃないですか。ふつうの応援エリアに来れる人ばかりじゃないですし、ああいう場所があるといろんな人が来れる」と話す。
そして、「チームがこういうことをやるなら、試合じゃなくても全力で応援するのが俺らですし、チームとサポーターが一緒になって盛り上がるのが川崎のスタイルなんで」とも続ける。そればかりか、「もっとよくできると思うんです。もっといろんな立場の人に来てほしいし、親御さんだって楽しみにしてほしいし。フロンターレで川崎全体がそういう風になればいい」と言う。
今回は感覚過敏の子どもたちが対象だったが、そうじゃない多くの人にサッカーやフロンターレを生きる楽しみにしてほしいという想いがあればこそ、細かいアテンドにつながっているのだと感じさせたのだった。
ふだんはGゾーンで応援をリードする立場にある海人さんは、選手入場の際に「楽しいことはみんなで」と笑顔を見せて、その後、特別な観戦室に一緒に行くと、一緒にペンライトや旗を振って時間を過ごしていたが、一緒に楽しむことこそが何よりも大事なことなのだろう。Gゾーンに掲げられた「ようこそとどろきへ!!たのしんでいってね!」の横断幕の裏で、その何倍もの愛をサポーターは注いでいたのである。
そして、チームとサポーターと企業がこうして一丸となればこそ、「悔しさが残る」と話したのが鬼木達監督だった――。
(取材・文/中地拓也)