■突然の場面で出た行動
ふだん、チームを応援している立場だからこそ共有できることがある。一緒に旗を振り、子どもたちの疑問に答え、そして、同じように盛り上がる。その存在は、子どもたちにとって「安心」と同義語だったように見えた。
ピッチレベルから観戦するための部屋に移動するまで、エレベーターを使わなければいけない。当然、全員が一斉に乗ることができないため、何度かに分乗することになる。ここで直面するのが、待つことの難しさだ。
なんでも、こうした時に「飽き」や「パニック」を起こしやすく、より細かいケアが必要になるという。そんな説明を記者が詳しい関係者に聞いた直後、そんな話が聞こえているはずもないサポーター有志の一人が動いた。「チャントを歌いましょう」と言って、別のサポーターの人に歌声を披露してもらったのだ。
子どもたちに歌詞カードを開いてもらうと、サポーターの一人である三郎さんが自身の喉を震わせてメロディーを響かせた。子どもたちは笑顔でそれぞれの時間を楽しんだ。歌詞カードに見入る子、一緒に歌おうとする子、あるいは歌詞カードと一緒に配られた地図に興味を示す子などといった具合で、不安を感じる子が出てくることはなかった。
サポーターのそうした行動があまりに自然で、しかも、とても子どもたち目線の慣れたものだったので、職業が教師や保育士なのかと思ったほどだった。その繊細なアテンドは、今回の企画にとって欠かすことができないものだった。