大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第119回「帽子詐欺?」(1)キングカズ・三浦知良が打ち立てた珍しい記録と「ダブル」の画像
多くの記録を打ち立て、現在もプレーを続けるキングカズ 提供/中地拓也

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は「大事なのは帽子ではなく、その中身」―。

■ハットトリックと言えばカズ

 「ハットトリック」という言葉を聞くと、まず浮かぶのがカズ(三浦知良)である。

 1990年代初頭、カズは日本のプロサッカー新時代を象徴するスターだった(もちろん、その時代だけでなく、いまでもスターである)。派手な「またぎフェイント」、ゴール後の「カズダンス」だけでなく、試合を離れての言動も、そしてファッションやヘアスタイルまでが国民的な話題となっていた。当然、取材の申し込みが殺到し、所属のヴェルディ川崎(現在の東京ヴェルディ)ではコントロールすることができず、カズのマネジメントを担当する事務所がすべてをさばいた。その事務所名が「ハットトリック」だったのだ。

 本来なら現役プレーヤーと報道との橋渡しは所属クラブの広報担当が行うべきなのだが、カズの場合には、この事務所の担当者が聡明で人柄も非常に良かったこともあり、クラブの通常業務を混乱させることなく対応でき、クラブにとっても報道側にも良かったのではないか。もちろん、カズにとってもプラスになったのは言うまでもない。そうでなければ、30年以上にわたってこの形が続いているはずがない。

 「ハットトリック」とは、言うまでもないことながら、「1人の選手が1試合3得点、あるいはそれ以上を挙げた」ということである。元々はサッカーで生まれた言葉ではないが、サッカーで世界に広まり、他のスポーツでも使われ、日本でも一般生活にまで使われるようになっているから、あまりサッカーを知らない人でも聞いたことはあるだろう。

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