■曺貴裁監督「自己解決能力は僕が指導した中でもピカ1」

「自己解決能力は僕が指導した中でもピカ1」と選手育成に定評のある京都サンガ・曺貴裁監督に言わしめる男はやはりただ者ではない。多少の壁にぶつかっても自分なりに乗り越え、進むべき道を見出してしまうのだ。

 振り返れば、横浜F・マリノスジュニアのスペシャルクラスのセレクションを3度落ちた小学生時代、神奈川県の中体連で埋もれていた中学時代、2011・2013年U-20ワールドカップ(W杯=コロンビア・トルコ)を2度続けて逃したユース代表時代、J2での戦いを余儀なくされた湘南ベルマーレ時代、2015年東アジアカップ(武漢)で初キャップを飾りながら定位置を確保できなかったA代表、出番なしに終わった2018年ロシアW杯…と、遠藤航は何度も困難に直面したが、そういった挫折を全く気にすることなく、前へ前へと突き進んだ。

 そうなれたのは、父・周作さんの「過去は考えるな」という教えがあったからだろう。

「過去を振り返ったところで人生が変わるわけじゃないし、適度な鈍感力も必要」という父の言葉に影響を受けたのか、彼は未来像を考え、それを逆算して1つ1つ目標を達成することを心がけたという。

 食事や体のケア、トレーニングはもちろん、憧れの選手の動画分析など必要なことを次々とこなしていく。彼のように特別な速さや高さ、技術を持たない選手は確実に力を養ってくことがより重要になる。その積み重ねが30歳のプレミア移籍につながったのだから、本当に素晴らしいことである。

(取材・文/元川悦子)

(2)へ続く
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