■スポンサーでありサポーター

 説明するまでもなく、川崎フロンターレのホームタウンは神奈川県川崎市であり、福島県ではない。さらにいえばホームタウン区域外なので壁もある。

 では、なぜこのようなイベントに至ったのか。それを導いたのは、フロンターレのスポンサーである『ALC BEEFキッチン』だ。先に書いたように、川崎市内の実店舗に加えて等々力競技場内でスタグルを販売する同社はフロンターレをスポンサーとしても支える立場にもある。

 この『ALC BEEFキッチン』と親会社が同じ『尾瀬小屋』という山小屋がある。これは、福島県、栃木県、群馬県、新潟県にまたがる国立公園の尾瀬を楽しむための宿泊施設で、ガイドなども行う。先ほど“大自然そのもの”といった檜枝岐村は村域に尾瀬ヶ原を有しており、この尾瀬小屋も檜枝岐村にある。

 この尾瀬小屋の関係者が、檜枝岐村の中で川崎フロンターレのグッズを配るなど、あまりある“フロンターレ愛”を県境を越えて披露した。その結果、村の中でフロンターレの知名度と、そして憧憬が強まった。それがゆえに、川崎フロンターレの応援ツアーが組まれることとなったのである。

 通常、クラブ自らアピールしてファン・サポーターを増やすものだが、今回は違う。スポンサーの愛が、フロンターレを応援する人を増やしたのである。『ALC BEEFキッチン』の担当者は熱心なサポーターであり、カメラを持って等々力に駆け付ける。スポンサーという形式通りの枠には当てはまらない愛情を持っており、それがあるからこそ、こうした異例の広がりにつながった。

(取材・文/中地拓也)

(中編に続く)

(2)へ続く
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