“薄氷”あるいは“奇跡”といえば、昨年のカタール・ワールドカップでのドイツ、スペイン相手の勝利もそれに近いものがあった。

 どちらの試合も、前半は完全に相手にゲームを支配されてしまっていた。もちろん、日本は粘り強い守備で対抗したし、相手の拙攻もあった。だが、あの内容で失点が1点ですんだのは“奇跡”とまでは言わないが、明らかに“幸運”ではあった。

 後半に入って、戦術を転換して一気に反撃を仕掛けてどちらの試合も連続して2点を奪って逆転した森保采配は見事としか言えないが、もし前半のうちに複数失点をしていたら、逆転勝利は不可能だったろう。

■失点後の勇気

 さて、現在開催中の女子ワールドカップでの日本のこれまでの4勝を振り返ってみると、どの試合も“奇跡”でも“薄氷”でも“幸運”でもない。すべて“完勝”であり、“必然の勝利”だった。

 ゴール前に「大型バス」を並べてきたノルウェーを相手に、たしかに日本は攻めあぐねた。

 しかし、日本はアウトサイド、とくに左サイドでウィングバックの遠藤純とインサイドハーフの宮澤ひなたがポジションを変えながら突破の糸口を探り続けた。そして、15分に宮澤が上げたクロスを最終ラインに入っていたMFのシルスタット=エンゲンがクリアミスしてオウンゴールを誘発した。

 ただ、前半のうちにグード・レイテンにヘディングシュートを決められて日本は同点とされてしまう。日本にとってはたった1回の決定的ピンチだった。

 前半、日本の守備陣は相手の高さを警戒しすぎたのか、守備ラインが下がってしまっていた。だが、失点した後は勇気を持ってラインを高く設定。日本のセンターバック3人(右から高橋はな、熊谷紗希南萌華)が高い位置にラインを保って覚悟を決めて競り合うと、長身選手相手でもほぼ互角に勝負することができたのだ。

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