■2011年との違い
なでしこジャパンは2011年の女子ワールドカップ・ドイツ大会で優勝を飾っている。だが、あの大会はまさに「薄氷の勝利」の連続だった。
準々決勝は開催国であり、また大会連覇を狙っていたドイツと対戦。日本はなんとか失点を防いでスコアレスのまま延長に突入し、延長後半の丸山桂里奈のゴールで競り勝った。続く準決勝はスウェーデンを3対1のスコアで破ったが、それにしても五分五分の勝負の中でよく3ゴールを決めて競り勝ったものだ。
そして、決勝戦では日本は世界ナンバーワンの座を確立していたアメリカと対戦。ゲームを支配していたのは間違いなくアメリカだった。
そのアメリカがアレックス・モーガンのゴールで先制したが、日本も81分に宮間あやがこぼれ球を押し込んで1点を返して延長に持ち込む。だが、ここで再びアメリカがアビー・ワンバックのゴールでリード。しかし、残り時間も少なくなった117分に、宮間のCKを澤穂希が決めた、あの奇跡の同点ゴールが生まれるのだ。
サッカーという競技は番狂わせが多いスポーツだが、番狂わせには定番のパターンがある。最も多いのはスコアレスのまま推移して、残り時間が少なくなった時点で弱者側が得点して逃げ切るパターンだ。あるいは、開始直後に弱者側が得点し、その“虎の子の1点”を守り切って逃げ切るパターンもよく見かける。
だが、ゲームを支配している強者側が2度先行して、2度とも追いつかれるというのはなかなかありえない得点経過である(2022年の女子アジアカップ準決勝の日本対中国戦では、あのアメリカ戦とそっくりの形で日本がPK戦で敗れたが)。
いずれにしても、2011年の優勝は“薄氷の勝利”または“奇跡の勝利”の連続によるものだった。