■土佐日記とUFOキャッチャーと

 川崎と高知が次にどのタイミングで試合をするか、しかもそれが公式戦となれば、最速で来年の天皇杯以外にはないだろう。ただし、同じ組み合わせとなる確率は極めて低い。極めて遠い縁かもしれないが、袖振り合う以上に濃厚なこの90分とパイナップルはそれぞれの胸にしっかりと刻まれたはずだ。

 多くの人がその名前を知る『土佐日記』の成立は930年代で、実に1100年近くも受け継がれている。その有名な冒頭から始まる物語は紀貫之が高知を旅立つ場面から始まり、京に帰る途中の出来事や縁をユーモアたっぷりにまとめた紀行文で、フロンターレサポーターがSNSに投稿している高知遠征と同じものである。

 川崎の選手にすなるパイナップル贈呈といふものを 高知の選手にもしてみんとてするなり

 ゴール裏で始まった今回の物語は、いつかの再会に向けてきっと語り継がれる。そして、また春野を舞台に戦う日が来れば、きっと多くのフロンターレサポーターが土佐を訪れるはずだ。「#フロサポ高知を叩いて勝つお」のハッシュタグと、川崎スタッフが用意するであろう「絶対に取れないUFOキャッチャー」の遠征地グッズとともに。

(取材・文/中地拓也)

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