前節のJ1リーグでは、見応えのある一戦が繰り広げられた。柏レイソルと北海道コンサドーレ札幌による「4-5」という両チーム合わせて9ゴールが生まれた試合である。このゲームの根底を、サッカージャーナリスト・後藤健生が読み解く。
■ご機嫌なペトロヴィッチ監督
6月3日の夜に行われた柏レイソル対北海道コンサドーレ札幌の試合(J1リーグ第16節)は激しい点の取り合いとなり、「4対5」というスコアで札幌が勝利した。それも、後半アディショナルタイムに柏がCKからつないで武藤雄樹が同点ゴールを決めると、2分後に札幌が浮き球のパスを使って人数をかけた攻撃を展開し、最後はDFの田中駿汰が決勝ゴールを決めるという劇的な結末となった。
「攻撃サッカー」は札幌を率いるミハイロ・ペトロヴィッチ監督の代名詞のようなものだ。一方、柏の監督はかつて日本代表不動のCB(リベロ)だった井原正巳。ネルシーニョ監督解任後チームを引き継いで、まずは守備を強化してチームを安定させたかったはずだ。
つまり、最終的な結果がどちらの勝利になっていたとしても、“激しい点の取り合い”になった時点ですでにペトロヴィッチ監督の思惑通りの展開だったということになる。
まして、試合終盤の劇的な展開を経て勝点3を手にしたのだから、ペトロヴィッチ監督の機嫌が悪かろうはずはない。
記者会見では、この試合の前半について「私が札幌に来てからベストの45分間」だったと豪語。その後も、何度も話題が脱線しながら饒舌な会見を続けたあたりも“いつも通り”の展開だった。
たしかに、前半45分の札幌の攻撃は凄まじかった。
前線に多くのアタッカーを並べてスピードのあるロングボールを入れて前線を走らせ、積極的にシュートを放ち、そして、その多くが枠を捉える。「7点か8点入っていてもおかしくなかった」はちょっと大げさだったかもしれないが、実際に見ていて「もっと取れたはず」という印象は確かに受けた。