このとき、ホイブラーテンは川崎からゴール方向に1メートル以上離れていた。おそらく、川崎にタックルする時間はないと判断し、シュートブロックだけを狙ったのだろう。それにしても岩尾がボールを取られた瞬間に反応し、そのコースへのスプリントを始めているのである。
岩尾が詰め寄られたときには、ホイブラーテンには「予測」というより「予感」があったに違いない。それでなければ、岩尾のもつボールを川崎がつついた瞬間に、すでに中央に向かって上体を大きく傾け、両腕を強く振るスプリントを開始できるはずがない。その予感とスプリント、そしてブロックするポイントを見極める目は、まさにワールドクラスだった。
■日本での成長で代表入りも
ホイブラーテンは今季ノルウェーの名門ボデ・グリムトから移籍したセンターバックである。U-21までのノルウェー代表歴はあるが、フル代表の経歴はない。左利きの選手で、開幕当初はややぎくしゃくした感じだったが、数試合で浦和のサッカーに適応した。デンマーク代表のショルツと組むセンターバック・コンビにGK西川を加えた守備中央の3人の安定感は、浦和にとってAFCチャンピオンズリーグ優勝の大きなバックボーンとなった。
1995年1月23日生まれの28歳。190センチ台が珍しくないノルウェー選手のなかで184センチというのはセンターバックとして「小さい」と評価されてきたのかもしれない。しかし浦和にきて智将マチェイ・スコルジャ監督の下でプレーするなか、彼は近代的なセンターバックとしてのプレーをどんどん伸ばしている。今後ノルウェー代表に招集される可能性もあるのではないだろうか。