後藤健生の「蹴球放浪記」第160回「田んぼのある風景」の巻(2)フランスW杯予選で出会ったイランの「ピラフ」の画像
エル・サレール行きのローカルバス 提供/後藤健生

 世界各地に、その土地ごとのサッカーがある。そのサッカーを織りなすのは体であり、体を構成するのは食べ物だ。蹴球放浪家・後藤健生は、各地の食文化の研究にも余念がない。日本の主食も、国境をまたげばさまざまに変化していくのだ。

■海と山が出会うところ

 さて、バレンシアに滞在することに決めたので、僕は本場のパエージャを楽しみにしていました。そして、英語の非常に詳しいガイドブックを持っていたのでそれを読んでいたら、「パエージャの本場中の本場はバレンシア郊外のエル・サレールという村だ」と書いてありました。

 これは、行ってみるしかないでしょう!

 バレンシアから約10キロ南。市内からはバスで行けるところでした。とても暑い日でした。

 東は地中海に面しています。美しい砂浜になっています。そして、砂浜の陸地側は林になっています。日本でもよく見かける「防風林」です。その林の中に民宿やレストランが並んでいて、そこで本場のパエージャが食べられるのです。

 さらに内陸側には何があったでしょうか? そう、そこは水田が広がっていたのです。

 もともと、この辺りの海岸沿いには内陸側に湖(潟湖)があったので、それを水田にして使っているわけです。

 海では魚介類が採れます。林の中には野鳥やウサギが棲んでいるはずです。そして、水田からは米が取れます。それを全部一つの鍋で炊き合わせたら、それがパエージャになるわけです。なるほど、ここがパエージャの本場だということに納得せざるをえません。

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