後藤健生の「蹴球放浪記」第160回「田んぼのある風景」の巻(1)1982年スペインW杯でパエージャの本場に乗り込むの画像
スペイン対ユーゴスラビア戦の入場券 提供/後藤健生

 世界各地に、その土地ごとのサッカーがある。そのサッカーを織りなすのは体であり、体を構成するのは食べ物だ。蹴球放浪家・後藤健生は、各地の食文化の研究にも余念がない。日本の主食も、国境をまたげばさまざまに変化していくのだ。

■日本を象徴する風景

 田んぼ(水田)というのは日本を象徴するような風景と言うことができます。田植えの季節、緑がまぶしい夏の水田、そしてたわわに実った稲穂が首を垂れて黄色く輝く秋の借り入れの頃……。

 日本各地を旅していると、そうした水田の風景に心を癒されるものです。

 北海道の新千歳空港に到着して、札幌行きの列車に乗って外の景色を見ていると異国を訪れたような気分になります。大きな違いは水田があまり見られないことです(今では、北海道も“米どころ”になっていますが、千歳のあたりでは水田はあまり見ません)。

 水田というのは水を張る必要があるので水平に造られます。傾斜地にある棚田でも、田んぼの1枚1枚は水平に造られています。

 一方、水田ではない畑ももちろん水平に近い方が農作業がしやすいでしょうが、水を張る必要がないので厳密に水平である必要がないので、まるで自然の丘のようにうねっているのです。だから、水田地帯と畑作地帯では景色がだいぶ違うというわけです。

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