大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第110回「脱いでもスゴイ?」(3)東京都2部でも女子ワールドカップでも変わらない「熱さ」の画像
ゴールを決めた選手は、なぜユニフォームを脱いでしまうのか? 撮影:中地拓也

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は「野生への回帰?」。

■「ドイツの頭脳」の歓喜

 オリバー・ビアホフは1990年代にドイツ代表のエースストライカーとして活躍、2004年からはドイツ代表のチームマネジャーとなり、同時に大学で経営学を修めて現在に至るまでドイツ代表とドイツサッカー協会の「頭脳」となっている知的な人物なのだが、現役時代にただいちどだけ、得点後にシャツを脱いで歓喜を表現した。

 1996年にイングランドで開催された欧州選手権(EURO)の決勝戦でドイツがチェコと対戦した。後半にはいってチェコが先制したが、ドイツは後半24分に交代で出場したビアホフが同点弾。試合は1-1のまま延長に突入する。そしてその5分。ペナルティーエリア内でユルゲン・クリンスマンからのパスを受けたビアホフは巧みにターンしながら左足シュート。ボールはチェコGKの手をはじいてゴールに転がり込んだ。

 1996年。「ゴールデンゴール」、日本で言う「Vゴール」の時代である。ボールがチェコ・ゴールの右隅に向かってワンバウンドし、ゴールラインを割った瞬間に、試合も、大会も、すべてが終了し、ドイツの3回目の優勝が決まった。狂喜したビアホフは背番号20の白いシャツを脱ぎ、チームメートの歓喜の波に包まれた。

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