2023年のJリーグが開幕して、2か月が経過した。J1とJ2では、順位表に近年にはなかった様子が見られる。新たな変化は、ピッチ上にも現れている。今シーズンのJリーグで見え始めた新たな潮流を、サッカージャーナリスト・後藤健生が読み解く。
■時代の流れをつくった川崎
Jリーグは、この数年ポゼッション・サッカーの究極形とも言える川崎フロンターレを中心に展開してきた。
2017年のリーグ戦初優勝の後、5シーズンで4度の優勝。主力選手の流出とあいつぐ中心選手の負傷で苦しんだ2022年シーズンも粘り強さを発揮して準優勝。まさに、絶対王者に近い存在だった(FC東京時代も含めて川崎に苦杯をなめさせられ続けてきた名古屋の長谷川健太監督は万感を込めて「素直にうれしい」と語った)。
そんな川崎だったが、中堅どころの選手が期待ほどの成長を見せず、さらに今シーズンもDFを中心に数多くの負傷者を抱えて、毎試合のようにメンバーが代わることもあって自慢のパスの精度が落ちて苦しみ続けている(第8節終了時点で13位と低迷)。
かつて、Jリーグではカウンター・サッカー全盛の時代があった。引いて守ってカウンターを仕掛けるサッカーがはびこり、アウェー・チームが勝つことが多くなってしまった。ホームチームはボールを握って攻撃をせざるをえず、そこをカウンターで狙われた結果だった。
その後、徹底してポゼッションにこだわり、攻め急がないでボールを持つ川崎フロンターレという特異なチームが現われた。基礎を作ったのは、当時の川崎の監督だった風間八宏で、現在の鬼木達監督がそのパス・サッカーに勝負への執着心や縦への速い攻めの形を付け加えて、ここ数年間、Jリーグで圧倒的な強さを誇ってきたのだ。
その影響もあって、最近のJリーグではポゼッション志向のチームが増えつつあった。