■報道陣の間で出た“凱旋試合”の推測

 実は今回、報道陣の間で「この試合を凱旋引退試合にするのではないか」という推測もあった。今回のワールドカップ予選でアジアの枠は「8.5」。これまでの「4.5」に比べると大幅に増加している。予選は11月からスタートするが、よもや敗退はないだろう。ならばワールドカップと同じメンバーを招集し、ベテラン勢の代表引退の花道にするのではないか——。

 だが森保監督の頭の中に、そんな甘い考えはなかった。「常にベストを選ぶ」という言葉どおり、次のワールドカップに向けたメンバーが選ばれた。そこに「情」が入る隙間はなかった。

 思い起こせば2022年カタールワールドカップメンバーのメンバーについても同様だった。使い続けてきた大迫勇也原口元気をメンバー外とした。本大会でも追加招集した町野修斗だけではなく、柴崎岳を一度も使うことなく大会を終えたのだ。

 采配も同じ。2022年カタールワールドカップのときは直前まで「4-2-3-1もしくは4-1-4-1(4-3-3)」で挑むと明言しながら、初戦のドイツ戦の前半でうまくいかないと見て取ると、3バックに変更してその後は3バックを基本にしたのだ。

 自分が作り上げてきたものでもあっさり方向転換出来る。そして選手選考も同じくらい冷徹でもある。

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